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2007年07月20日

ドライアイのメカニズム

eyedrop01.jpgドライアイのメカニズム
ドライアイは、涙の量や質の異常によって眼の表面の健康が保てなくなる病気のひとつです。
眼の中央には光を通す窓として透明な組織の「角膜」があります。
この角膜の透明性を守るために水中に暮らしていた生物は進化の過程で陸に上がるとき、目の表面に海を保持してきたと言われています。
その海が、涙ということです。

ドライアイがひどくなると透明な角膜が傷ついてしまいます。
角膜の傷というのは、角膜の表面が荒れた状態で肌が乾燥してカサカサしてるのに似ています。
肌がカサカサになると不快でひどい場合はヒリヒリ痛みも生じます。
角膜も同じで、傷がつけば防御力も弱まるので細菌やカビ、ウィルスなどの感染も起こりやすくなります。
角膜周囲の白目(結膜)も同様に傷つき、不快感などのトラブルも起こります。

tear01.gif涙は主に主涙腺で作られて瞬きによって目の表面に運ばれます。
また、瞬きによって鼻側ある上下二つの涙点から排出されます。
通常では涙の10%が眼の表面から蒸発していきます。

「涙」と一言で言い表しますが、実は涙は三層構造になっています。
一番外側に薄い油膜のような「油層」
中間に栄養分と水分をたくさん含んだ「水層」
眼の表面側にタンパク質でできた粘りのある「ムチン層」があります。

涙の大半を占める水層は主涙腺でできます。
油層は、まつげの生え際にありマイボーム腺という腺から分泌され、瞬きで上下の瞼がくっついて離れる時に涙の表面に油膜をはり涙をなめらかで美しい曲線になるように働いています。
また、涙の水分が蒸発するのを防いだり、外部から異物が侵入するのを防いだりします。
ムチン層は、結膜にあるゴブレット細胞から主に分泌されます。
粘りがあり、水層を眼の表面にとどまらせる接着剤のような役目があります。
眼の表面の涙の量は、わずか7マイクロリットル(1マイクロリットルは1ミリリットルの1000分の1)にすぎません。
それでも、眼の表面を感想や異物から保護したり、栄養を与えたりととても重要な役目をしています。
また、これらの生産と運搬、排出が正しく行われることで眼の表面が正常に機能するのです。

ドライアイはその原因によって大きく二つのタイプに分けられます。

「涙液減少型」・・・涙の分泌量が減少する
「涙液蒸散型」・・・涙の蒸発量が増えてしまう

ドライアイは、この2つのタイプのコンビネーションと考えられていますが軽度のドライアイの方には分泌がほぼ正常の「蒸散型」のドライアイが多いそうです。

ドライアイの種類

涙の分泌には2種類あります。
「基礎分泌」・・・常に目の表面を潤して保護している涙
「刺激性(反射性)分泌」・・・悲しい時や目にゴミが入った時などに出て来る涙

eye_02.jpgドライアイの人のほとんどが、基礎分泌が減っていても刺激性分泌は正常です。
従って、ドライアイの症状はあるけれど悲しい時には涙を流して泣く事が出来ます。

しかし、シェーグレン症候群のような重症なドライアイの人で刺激性分泌の涙も出なくなってしまう場合もあります。
゛ドライアイなのに涙が出すぎる"と言うのは平常な状態なのに刺激性分泌の涙が頻繁に出てしまう状態です。
その原因としては、基礎分泌が不足するために目の表面の保護が不十分になり、刺激を受けやすくなっていつる場合が考えられます。
このような場合、風が少し当たったようなちょっとした刺激でも涙がたくさん出てしまいます。

涙の出すぎてしまうドライアイの場合は、水分補給の目薬をさすして、刺激を避けるために保護用の眼鏡をかけるなどで改善できます。

一方、高齢の方に多いケースで涙の分泌量は正常なのに涙の表面を覆っている油の膜が少なくて涙が蒸発しやすくなり目の表面に水分を保てなくなるドライアイがあります。
それに加えて、高齢になると涙の排水口である涙小管という管がつまり気味になっていることが多く涙がうまく排泄されず目の外に溢れて涙目になる事があります。
涙の蒸発が早くて目が乾くのに涙の排出が遅く涙目になるというとても複雑な症状です。
年配の方が、目がしょぼしょぼするとかくしゃくしゃするとか言うのは、この症状の典型です。

こう言った症状の場合、瞼のふちにある分泌腺(マイボーム腺)の油の分泌を増やすために蒸しタオルで目を温めると効果的です。
排泄口のつまりがあまりひどい場合は管を開通する手術が必要になることもありますので気になる場合は、一度眼科医に診てもらいましょう。

蒸散型のドライアイ
1.まばたきの減少・・・パソコンのモニターを凝視したりすることで瞬きが減少し、目が開いたままになるため涙の蒸発が増えます。

2.油分の不足・・・マイボーム腺が目づまりや炎症をおこしたりして、油分が正しく供給されていないなど。

3.乾燥した環境・・・エアコンの影響などで湿度が低下し乾燥すると肌と同様目も乾きやすくなります。

4.涙が定着できない・・・ムチン層やその下の目の細胞に障害が起こると涙が目の表面にとどまりにくくなります。アレルギーなどで角結膜の表面が傷んでいたり、コンタクトレンズの長期装用で目の表面が荒れた状態だと涙が定着しづらくなってきます。

減少型のドライアイ
1.悲しいときや目にゴミが入った時は涙がでるが、普段の涙が減少している。
2.悲しくても目にゴミが入っても涙が出ない。

シェ―グレン症候群などの自己免疫疾患などで涙腺が破壊されてしまうケースがこれに含まれます。
いずれも、原因は解明されていません。
これらの減少型ドライアイが男性よりも女性に多いことや、その多くが40歳以降に起こることなどから、ホルモンも関係しているのではないかと考えられています。

ウェットタイプのドライアイ
namida_me01.jpg
「蒸散型」「減少型」のほかにいつも涙がこぼれてしまう、涙目で目がくしゃくしゃしてしまうなどといった症状でドライアイのイメージとは違うようですが実は、これもドライアイの症状です。
これは、主に涙の排出機能が正しく働かない結果、目の表面が刺激を受けやすくなっている状態です。
そのため、涙が異常に分泌されてしまい、また、涙が正常に排出されない事で目の表面に老廃物や異物が残ってしまいその結果としてこのような症状になります。

これらを含めて、涙の変化により目の表面の健康が損なわれている状態をドライアイと呼んでいます。

簡単なドライアイの自己診断法
まず、目を閉じます。
そして、目をパッと開けてそのまま、何秒開けていられるかを計測。
5秒間開けていられなかったらドライアイの可能性があります。一度、眼科医にいって検査してみましょう。

ドライアイとコンタクト

ドライアイとコンタクト
contact04.gifコンタクトレンズは目の表面に直接接しているわけではなく涙の層に浮いています。
ドライアイで涙の少ない人はコンタクトレンズによるさまざまな症状がでてきます。
例えば、潤滑剤である涙の不足によるり、レンズと角膜が瞬きの度にこすれ、ゴロゴロしたり乾燥したりします。
また、角膜に傷がついて慢性の炎症が続くと充血したりめやにが増加したりします。
さらに、角膜の傷がひどくなったり、分泌物でレンズが汚れると、かすみやくもり感がでてきます。
ひどい場合、コンタクトレンズを入れて1〜2時間で装用が難しくなる場合もあるそうです。

ドライアイの場合、コンタクトレンズはソフトとハードどちらを選んだら良いのかと迷う場合があると思いますが。
基本的に、ソフトレンズは水分を吸って本来の形状を維持しています。
従って、レンズが乾燥すると上記の症状を引き起こし、ひどい場合は自然に目から脱落してしまう可能性があります。

また、ソフトレンズはサイズがハードレンズに比べ大きいので、乾燥して角膜に張り付くと目の酸素不足を起こしやすくなります。

eyedrop01.gifいずれにせよ、レンズの形状や種類を変えながら自分にあったものを見つけましょう。

一方、ハードレンズは水分を含んでいないのでサイズも小さくソフトレンズのようなことは起こりにくくなりますのでドライアイの方はまず、ハードレンズを試してみるのが良いと思われます。
ただし、涙の不足による角膜とレンズの擦れは起こりやすいのでゴロゴロ感はソフトレンズよりも強いと考えられます。
ドライアイでコンタクトレンズを使用する場合、目薬をさす回数をできるだけ多くして防腐剤の入っていないドライアイ用の目薬をさすことをお薦めします。

また、目薬以外では涙の出口である涙点を涙点プラグという小さな栓で閉鎖する方法があり、これにより目の表面にたまっている涙の量を増やしてコンタクトレンズを装用しやすくします。

このような方法でも症状が改善されない場合には、メガネや近視矯正手術(レーシック)によって視力を矯正するという方法もあります。

ドライアイとアレルギー

ドライアイとアレルギー
tear_01.gifドライアイで涙が足りないと目の洗浄能力が低下します。
涙の洗浄能力が低下すれば目に入った花粉や異物を洗い流す力が低下し、目の中でアレルギー反応を起こしたり、アレルギーの症状を悪化させると考えられます。

逆に、アレルギーで炎症を起こすと目の表面が炎症により傷ついたり荒れた状態になります。
このため、涙を目の表面に定着させているタンパク質(ムチン)の分泌や性状が変化し、涙が目の表面をきちんと覆う事ができなくなります。
そして、ドライアイを引き起こします。
このように、ドライアイとアレルギーはお互いに相手の症状を悪化させる要因になります。
なので、両者を同時に治療したりケアすることが大切なのです。

検査と治療方法

【検査方法】
1.検診
kensa02.jpg角膜や結膜の状態をスリットランプという特殊な顕微鏡で診ます。
これで角膜のおおまかな傷の有無が確認できます。
また、瞼の状態や縁にたまる涙の状態、目の周囲、マイボーム腺の状態などを観察します。

2.染色検査
色のついた検査薬を点眼して角膜や結膜の表面の傷の状態をより詳しく診ます。
健康な角膜や結膜は染色されませんが、傷があると染色されます。

3.分泌量測定(シルマーテスト)
目盛りのついた白い濾紙(シルマー試験紙)を下瞼にはさんで、5分間でどれくらい濡れるかで涙の量を測定します。

5ミリ以下だとドライアイ
5〜10ミリはドライアイの疑い
10ミリ以上は正常と診断します。

濾紙の代わりに綿糸を使用する場合もあります。
綿糸の場合は、10ミリ以下がドライアイとなります。

4.BUT測定(涙液層破壊時間測定)
検査薬を点眼したあとスリットランプで角膜の表面に広がった涙の状態を観察します。
目を開けてしばらくすると涙の層の一部が乾いてドライスポットが現れるのが確認できます。
目を開けた瞬間から最初のドライスポット出現までの時間を測定し、10秒以上なら正常、5〜10秒がドライアイの疑い、5秒以下だとドライアイの可能性が高いと診断します。

5.クリアランステスト
涙は正しく分泌されることも重要ですが正しく排出されることも重要です。
涙が正しく排出されないと老廃物や異物が目の残ってしまうために目の表面の健康が保てなくなります。
涙は目頭にある涙点から排出されます。
この涙点や涙の排水口である涙小管が閉じていたり、また高齢の方の場合、瞼の張りや弾力が失われていたりすると涙の排出がうまく行えなくな事があります。
クリアランステストでは、染色液を点眼してその色が5分後にどのくらい薄まっているか涙できれいに洗い流されたかを診断します。

【治療法】
eyedrop02.jpg1.点眼
涙と浸透圧を同じにした生理食塩水タイプの点眼薬(ソフトサンティア/参天製薬)が基本です。
保湿と洗浄効果がありますが、保湿の時間は長くありません。
そこで、ヒアルロン酸を加えて保湿効果を高めた点眼薬(ヒアレインミニ/参天製薬)などもあります。
ヒアルロン酸は化粧水などにも利用される保湿効果の高い粘着性物質で、角膜・結膜の傷の治りがよくなることも確認されています。
このヒアレインミニには0.1%と0.3%の2種類の濃度があり角膜の傷の程度によって使い分けます。
市販されている目薬にはさまざまな成分が含まれていますが、基本的に刺激物質を含むものは避けた方が良いでしょう。
また、ボトルタイプの目薬には全て防腐剤が含まれていますのでドライアイの方が頻繁に使う場合には必ず防腐剤の入っていないディスポーザブルタイプの目薬を使いましょう。
市販のものでも、ヒアルロン酸入りのものもあります。(ティアーレf/オフテクス)
目に炎症があったり、アレルギーがある場合には抗炎症薬や抗アレルギー薬を含むものなど、それぞれに有効な目薬を併用します。

2.涙点プラグ
涙の分泌が少ない場合は、その涙を有効に利用するために涙点に栓をしてしてふさぎ、涙の排出を減らします。
シェ―グレン症候群などの重度のドライアイの人では涙点を全て塞いでしまいます。
泣けば涙の出る人で基礎分泌の少ない人は、上下のどちらかの涙点だけをふさぎ、目にとどまる涙の量を増やしながら排出の機能も保ちます。
栓は、シリコンで出来た直径0.5ミリ〜0.8ミリの小さなプラグです。
眼科外来で5分程度の処置で挿入でき、痛みの心配もなく健康保険も適応されます。
なかには、違和感を感じる人もいるようですが簡単に取り外す事ができます。
アレルギーのある人は不適応になる場合があります。
また、このプラグが出来ない人やすぐ外れてしまう人は、涙点を焼却して塞いでしまう方法もあるようです。

3.血清点眼
涙の中には、ビタミン・ホルモン・成長因子など目の傷を積極的に治す成分が含まれています。
したがって涙が極端に少ない人は乾きに加え涙の成分が目に行き渡らないため角膜や結膜に障害が起こる可能性があります。
この場合、生理食塩水タイプの目薬をさしても改善はされません。
そこで、これらのケースには自分自身の血液を採取して、血球成分を取り除いた血清点眼液を使用します。
血清の成分と涙の成分はとてもよく似ているので非常に効果的です。

4.温熱治療
アメリカでは「ウォームコンプレス」と言って目を温める治療法が導入されています。
これは、マイボーム腺に詰まって固まった油が温めることで溶けてスムーズに分泌されるようになるためです。
温めると目の周りの血行が良くなって目を閉じてリラックスできるので疲れ目にも効果的です。
遠赤外線を利用した治療器具やケア用品もありますが、家庭やオフィスでは蒸しタオルでも代用できます。
ただし、目に炎症を起こしている時や充血している時は避けた方が良いでしょう。

5.保護メガネ
メガネに乾燥防止のカバーや保湿のための濡れたスポンジを取り付けるなどして目の周りの湿度を上げて乾燥を防止します。
これにより目の周りの湿度を2倍以上に上昇させる事ができます。点眼や涙点プラグなどの併用で治療効果を高めます。

6.保湿ジェル
目の乾燥が強い場合、特に涙の分泌が減ってきて乾きやすい夜間に眼用の保湿ジェルを使用します。
就寝時に目を開いてしまう人にも効果的です。

7.飲み薬・漢方薬
麦門冬湯(ばくもんどうとう)という漢方薬があります。
これはカラ咳など粘膜の乾く病気に健康保険の適用が認められています。
これがドライアイに効果的な場合があります。
また、効果は長期間服用することによって少しずつ現れます。
ドライマウスの患者さんに用いられる唾液分泌を促すサリグレンやエポザックといった薬がドライアイにも有効なケースが見られるようで今後の研究が期待されます。

ドライアイの予防法

ワークスタイルの改善
pc_eye01.jpg・パソコンなどの作業中が瞬きなどを意識的に増やす
・モニターに空や照明が映り込まないよう、見易い画面にする。文字のサイズを大きくしたり明るさを調整しましょう。
・エアコンの風が目に当たらないようにする。
・加湿器を使用する。
・仕事中だけでも保護メガネを使用する。
・こまめに休息をとる

目薬のケア
コンタクト使用者は仕事中は目が乾燥しやすくなりますので、防腐剤抜きの目薬をデスクに常備し不快感を感じたときはこまめに点眼しましょう。
涙が不足するとコンタクトレンズが直接角膜に触れて角膜をいためますので注意しましょう。

ストレスマネジメント
stres.gif人には2種類の自律神経があります。リラックスしたときに優位になるのが副交感神経。
緊張したり、戦闘モードを司るのが交感神経です。
涙の分泌は副交感神経に支配されているのでリラックスしたときに分泌がスムーズになります。
リラックスする時間を持ち、ストレスを貯めない工夫をする事は涙の分泌にも健康にも有効です。
また、一般的に夜間は涙の分泌が減る傾向にあるようです。
夜更かしもドライアイにはあまり良くありませんので注意しましょう。

シェーグレン症候群

【シェーグレン症候群】
シェーグレン症候群は、涙を供給する涙腺が壊れてしまって涙が作り出せなくなる病気です。
この病気は、通常、外敵から身を守る「免疫」システムの異常によって起こると考えられています。
体には、外敵(細菌、ウィルス、異物など)から身を守るために戦う「免疫」という防御システムがありますが、この免疫機能に異常が起こり、自分の体を攻撃し始めると「自己免疫疾患」という病気になります。

virus.jpgシェーグレン症候群はこの自己免疫疾患のひとつで、攻撃の対象が涙腺や唾液腺であるため涙や唾液の分泌が低下してしまいます。

涙腺自体が壊れてしまいますので、重度のドライアイとなり、悲しいときや埃が目に入ったなどの刺激性分泌の涙も出なくなり「悲しいのに泣けない」状態となります。
目にゴミが入っても自分の涙で洗い流せなくなるので目の表面は傷が出来やすくなり目が開けられないくらい辛い状態になるようです。

また、唾液の分泌不足のため、口が渇く、虫歯が増える、舌が傷むなどの症状が起こります。
更に、リウマチなどの自己免疫疾患を合併することも多く、そうなると関節痛などの全身症状も出てくるようです。

現在の所、シェーグレン症候群を根本的に治す治療法は残念ながらありません。
しかし、症状を和らげて日常生活を送れるようにコントロールする事は可能です。

この病気の場合は、眼科での治療だけではなく口腔外科や内科などの総合的な診察を受けて個々の症状に合わせた治療が必要です。